バンドメンバーの静 炉巌(せいろがん)です。

ちょっと前に「いらっしゃいませ♡冥土喫茶へ 群馬・桐生市にオープン」っていう記事を読んだわけ。

この“冥土喫茶“ってのは、メイド姿の60代店員が出迎えて、高齢者に居場所と交流の場を提供するところなの。

で、そういえば何年か前に、藤岡藤巻に”冥土喫茶”をテーマにした漫才を書いたことを思い出して漁ったら見つけました。

これね、文字だと”メイド”と”冥土”の違いがわかるけど、言葉にすると混乱するかなと思って、書いたはみたけどそのままになってた。

そんなわけで、せっかく見つけたのでここでご紹介です。しかし、似たようなことをホントにやるとはなぁ。



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  「メイドカフェをはじめます」
 
藤岡「オレさ、カフェをはじめようかと思うんだよね」

藤巻「えっ? カフェって喫茶店でしょ。今どき流行らないんじゃないの?」

藤岡「いや、オレがやりたいのは、そういうカフェじゃなくてさ。メイドカフェなんだよ」

藤巻「ますます終わってるって!」

藤岡「そっちのメイドじゃなくてさ。オレたちだって、そろそろ冥土に行く歳だろ。だから、老人をターゲットにした冥土カフェを作るんだよ」

藤巻「あっ、そっちの冥土ね! どんな店なのか想像がつかないけど」

藤岡「まぁ、入り口は普通の見た目だよ。ただ色的には全体的にセピアな感じだね」

藤巻「枯れた感じね」

藤岡「で、店のドアを開けると、『お迎えに参りました』って、冥土(メイド)さんが出てくる」

藤巻「ちょっと待って! 冥土カフェにメイドがいるの?」

藤岡「そりゃいるよ。冥土カフェだもの。でもね、そこらヘンのキャピキャピした感じの女の子じゃなくて、落ち着いた感じ。黒いワンピースを着た後家さんだね。歳の頃なら40歳ぐらいですよ」

藤巻「なんかいいね」

藤岡「店内のBGMとしては、木魚がポクポクとなっている。この単調さは、魂が抜けていくような魔性のリズムなんだよ。で、冥土さんが席に案内してくれるわけ」

藤巻「もしかして、オムライスとかもあるの?」

藤岡「お前、好きだもんな。もちろん、ある。これは凝ってるぞ。フードプリンタを使って、食べられるインクで絵を描くんだよ。お前がオムライスを注文するだろ。そしたら冥土さんが撮ったお前の写真が、オムライスの上に印刷されてくるんだよ」

藤巻「ケチャップで描くんじゃないの? あれがいいんだけど」

藤岡「ここからなんだよ。このオムライスは、お重に入って出てくる」

藤巻「お重って、蓋がついてるやつだろ」

藤岡「その蓋がポイント! 蓋の真ん中が観音開きに開くようになってんだよ」

藤巻「なんだか、棺桶の覗き窓みたいだね」

藤岡「それがコンセプト! 観音開きの蓋を開くと、オムライスに印刷されたお前の顔がみえるんだよ」

藤巻「イヤな感じだな」

藤岡「まぁまぁ。オムライスが運ばれてくると、冥土さんの手にはケチャップの容器が握られる」

藤巻「出ました。魔法のケチャップ!

藤岡「冥土さんは、小悪魔的にホッペを膨らませてね。オムライスに描かれた顔の口のところに、ケチャップをかけるんだよ。『吐血したでちゅー!』とか、言ってさ」

藤巻「かわいい!…かな?

藤岡「かわいい…よね? で、両手の指でハートマークを作る代わりに、手を合わせてさ。小首をかしげて『なむなむちーん。成仏しようね❤️』って言うわけ」

藤巻「うんうん」

藤岡「オムライスを食べ終わるとね。冥土さんが、チーンとお鈴(おりん)を鳴らしてさ。そしたらデザートのパフェが運ばれてくる。クリームの代わりに饅頭が乗ってるやつ」

藤巻「重いよ!オムライスのあとだよ

藤岡「これまた器が凝っててね。パフェは舟盛り用の舟に乗って出てくるわけ」

藤巻「よく居酒屋で刺身が乗ってるやつ? あっ、三途の川の渡し船ってことか」

藤岡「そのイメージ! で、パフェを食べながら、冥土さんと『オレ、もうこれに乗って逝っちゃおうかな』、『まだ逝かないでよ』、なんて会話をイチャイチャと楽しむわけだ」

藤巻「いいじゃん! ちょっと聞くけどさ。その…冥土さんと、店外デートなんてできないよね?」

藤岡「よくぞ聞いてくれました。もちろん、できますとも! むしろ、推奨しています」

藤巻「それホント? すごいじゃん!」

藤岡「但し、行ける範囲は限られてるけどね」

藤巻「そうだよね。どこまでいけるの? 近所の公園とか?」

藤岡「一番近いATMまで

藤巻「えっ?」

藤岡「店の勘定はバカ高いからね。大抵はションボリと連行されて行くよ」

藤巻「ぼったくりじゃん! それじゃリピーター客がつかないよ!」

藤岡「大丈夫! ジジイは都合の悪いことは忘れちゃうから

藤巻「さすがに、それはないって!」

藤岡「でも、お前に、この話をするの3回めだよ